作 マサル


『聞いたか?今日城に入り込んだ奴がいてさ』

『聞いたよ。どうせ反乱軍の奴だろ?』

『そうだろうけどよ。入ってきた奴は女の子だって』

『女の反乱軍がいてもおかしくないだろ?』

『最後まで言わせてくれよ』

二人の男が城門の前で話していた。

ツンツン髪をしたつり目の男と

天然パーマで開いているのか閉じているのか分からない目をした男。

『ニムの話は面白くないんだよ。』

ニムと呼ばれた天然パーマの男はムッとして言った。

『なんだよ・・・アルフはその子に興味は無いのかい』

『う〜ん 少しは興味があるかな なははは』

アルフと呼ばれたツンツン髪の男は少し顔を赤くした。

『まぁ、どうでもいいや。どうせこの国の王ももうじき終わるだろうし』

『こ・・・怖いこというなよ。=反乱が近いってことだろ それ・・・』

ニムが脅えた口調で言った。

アルフが暫く空を見た。

今日は少し暗めの青い空だった。

アルフは長く息を吹き、ニムを見て言った。

『まぁ、俺 今の王は嫌いだね。好き勝手やって 民のことは見向きもしない』


昔はとても豊かで明るい国だった。

しかし、1年前に前王が病死し、跡を継いだのが王の弟はこの国を変えてしまった。

重い税で民はみんな苦しんでいる。

昔の国の面影がなくなってしまった。

今は反乱軍が結成されて争いが絶えない。


『俺だって今の王は嫌いさー あぁ〜 何で死んじゃったのかなぁ』

『だから病死したんだって・・・俺そろそろ牢の警備に戻るな』

アルフはそういって戻ろうとしていた。

『あっ そうだ』

何かを思い出した顔をして街に出た。

『何処行くの〜?』

ニムのことは完全無視だった。

向かったのは城門からまっすぐ進んだところにある小さな店だった。

そこで3本ほど何かを買い込んだ。


チクワだった。


アルフの大好物らしい。

この店は自作のちくわがそれなりに人気があった。

けど最近デモなどであまり売れない。

今はアルフが常連客となっている。

お陰で店の人とかなりの仲だ。

『あんたチクワ好きなんだねぇ』

『なはは ホント美味しいよ これ』

『まぁ あんたのお陰でやる気が出るけどね』

そういって店の人が笑顔を見せる。

『けどいつ反乱が起きるかわからないねぇ・・・
この店ももうすぐ閉めることになりそうだよ』

アルフが少し寂しそうな顔をして言う。

『残念だけど、その日は近い。
おじさんもそろそろここを離れたほうが良いよ』

『夜逃げか・・・難しいねぇ。警備もきつくなったし・・・』

今日 女の子が城に侵入して城と街の警備が厳重になってしまった。

暫くは警備は堅いままだろう。

『ごめん おじさん。俺も手伝いたいんだけど・・・』

『分かってるよ あんたの立場ぐらい。
心配いらんよ。一人で何とかなるさ。隣の村にでも行くさ。』

『・・・俺もいつか行くよ。このゴタゴタが落ち着いたら』

王が死んだら・・・。


『よう。お帰り。街で何していたんだ?』

『チクワ買ってた』

『チクワ!?』

ニムが大きな声で笑った。息を詰まらせた。

そしてニムが言った。

『ぜぇー ぜぇー そろそろ 戻らないと まずいんじゃないのか?』

『あっ まじやべぇ』


『・・・また遅刻か? アルフ』

『すまねぇ ローレン』

ローレンと言われた男 アルフの幼馴染。

短いボサボサ髪でアルフよりつり目だ。

『・・・アルフ・・・幼馴染だが私とは位が違うんだよ。
ローレンとは呼ばないで欲しいね』

『解ったよ ローレン。 じゃあ、俺 牢の警備に戻るな』

『解ってないじゃないか』


薄暗い道を進んで行く。

その間 アルフは昔のことを思い出していた。

昔の国 昔の王 昔のローレン そしてチクワ・・・

チクワを口に銜えながら薄暗い道を進んでいった。

暫くして暗くて寒い牢に着く。

『警備って誰も居ないんだよなぁ・・・』

ぶつぶつと呟いていた。


ガタガタッ


『冤罪だぁーーーーっ!!!』

『吃驚したぁーっ!!!』

一番奥の牢から耳が裂けるほど大きな声がした。

アルフは近寄ると、鉄格子を掴んで泣きながら訴える少女が居た。

大きな目で髪は長め 服は涙でグシャグシャになっていた。

侵入して捕まった女の子はこの子のことだろう。

『冤罪・・・だぁ〜・・・』

さっきのでもうバテバテのようだ。

アルフは少女に話しかけた。

『君がここに侵入して捕まった子だね?』

『だから冤罪なんだってばぁ』

涙目で訴えられ アルフは戸惑った。

『い・・・うん で、一体何をした?』

『何もしてないんだってばぁ』

『駄目だこりゃ』

とりあえず落ち着かせようとする。

っとアルフは持っていたチクワを差し出した。

『・・・ほら これチクワ・・・美味いぞ』

『・・・・・・』

少女はチクワを受け取り 暫くチクワを見た。

『・・・安心してくれ 普通のチクワだよ』

少女はチクワに銜えた。

『・・・・美味いか?』

『・・・・うん』

そのままチクワ 二本目を食べた。

『俺のチクワが・・・』


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