世界観設定:『やさぐれハンター「レトナ」』(ファンタジーです)

「そうだよ!私達には男っ気が無い!」
レトナは突然言いました。
「な、何を突然・・・」
シレイはその唐突な発言に戸惑いの表情を見せ、上目遣いにレトナを見ました。
「何で突然そんなことになるの?レトナ?」
そして再度尋ねました。
「うん?そうだねぇ・・・やっぱほら!私ら女二人じゃ物騒でしょ?やっぱ」
「そんなこと言ったってレトナは男でも女でもない魔族なんじゃ・・・」
「駄目だよ!そんなこと言っちゃ駄目!」
レトナはその赤髪を揺らしながら力説しました。
「そういう訳だから、アドベンチャーズギルドに行くよ!」
「う、うん・・・」
シレイは渋々ついて行くことにしました。

時はメレイネ歴445年、世間一般で言うところの「魔王」が
「もうやってられんわい!」と、悪事をやめてしまい、野放しになったモンスターだけが人々を苦しめるという
何だか比較的平和とも言える世界で、
その魔王を降参させたのが彼女、レトナです。
魔族と人間族の間に奇跡的な確率で生まれ、現在ピチピチの18歳。
身長175cmという長身で、腰近くまで伸びたロングストレートの赤髪は手入れもしていないのに艶やかで、
その瞳は魔族から受け継がれた深い紅をしています。
細身でありながら大剣を振り回すという豪腕の持ち主です。
それでいて魔族顔負けの魔力を持ち、桁外れの生命力も持っています。
少々男勝りな性格をしていますが、精悍な顔つきがその性格にぴったりマッチしています。
そして、訳あってそのレトナと一緒に魔王を懲らしめることになったのが彼女、シレイです。
人見知りが強く、人間との関わりをあまり好まないエルフの生まれで、
三つ編みの緑髪と何時でも眠そうな垂れ目が特徴的です。
レトナと一緒に立っていると余計低く見える身長は155cm
年齢は16ですがとても幼く見えます。
瞳の色も深い碧ですが、左の瞳だけが紅く染まっています。
これはある事故によってシレイが貧血になった時、レトナの血を分け与えたからだとされています。
ちなみに聖術師ですが、何故か一つだけとんでもない攻撃魔法を習得していたりします。
そして、
そんな二人がぶらりぶらりと旅をしてとある街のアドベンチャーズギルドに立ち寄った時のことです。

「おじさーん!男二丁!」
レトナは八重歯をニッとキラつかせながらマスターに言いました。
「・・・」
マスターからは冷たい視線が帰ってきました。
「レ、レトナ・・・それは・・・ちょっと・・・」
シレイがオドオドしながら言います。
「なんでー?いいじゃん。男二人雇うだけじゃん!」
「そ、そういう問題じゃ・・・」
気が付くと二人は室内の全ての人から冷たい視線を受けていました。
室内には屈強なファイターや熟練のアサシン、ウィザードなどが仕事を待ちながら世間話や酒盛りをしています。
「ね〜ね〜、マスター!強い男二人雇いたいの!」
「悪いがお嬢ちゃん・・・」
マスターは頭を抑えながら言いました。
「いくらなんでもあんたみたいな奴には・・・」
言いかけた時です、
「私みたいな若娘には紹介する男は居ないと?」
「ん、ま、まぁ・・・そうだな・・・」
「・・・そう・・・」
レトナはふぅと一息ついてから他の冒険者達を見やり、言いました。
「私に雇われたい人は居ない〜?」
酒場のようなどよめきが一瞬にして静寂となりました。

「あー、何か痛い奴が居る・・・」
魔剣士マサルは思いながら口に漏らしました。
「・・・」
テーブルの反対側に居るアサシンは苦笑いのまま女性を見ていました。
そして言いました。
「なーんか、ろくでもないことが起こりそうなヨカーン」

「お嬢ちゃん、俺が雇ってやるぜ?」
鼻息の荒い大男が椅子から立ち上がり、手を伸ばしてきました。
「何?あんた熊?ってかモンスターじゃないの?気色悪いわねぇ、寄らないで!」
レトナは言いたい放題言いました。
「あんだと?!このアマ!」
大男がレトナにつかみかかろうとした時です
「あ、ダメ!」
シレイが言いましたが、かなり遅かったようです。
シレイが警告する頃には既に大男はテーブルを2つ、椅子を6つ越して壁にめり込んでいました。
「よわっちぃー」
レトナは言いました。

「コリャ始まるな・・・」
マサルはさり気なく店の隅に酒を抱えて移動しつつ言いました。
「始まるな・・・」
アサシンも移動しました。

「こンにゃろぉぉぉぉ!!!」
背が低く細身な男が低い姿勢で突進しました。
ゴリィ!
「ンぎゃ!」
鈍い音とともに見事な膝蹴りを顔面に喰らい、吹き飛びました。
「弱い奴はお・こ・と・わ・り♪」
レトナはちょっと可愛く言いました。
次の瞬間にはアドベンチャーズギルドは戦場と化していました。

ドス!ガス!
ガ!
ゴリッ!
ドフッ!

「右足のローキック、そのまま反動で回し蹴り、後ろから来た奴に肘鉄をお見舞いして、うゎ!顔面グーでいっちゃったよ
 痛そー・・・」
マサルはグラスを片手に観戦していました。
「ありゃ相当腕が立つな・・・」
アサシンはまっとうなことを言いつつ気絶している男達の懐から金品を抜き取っていました。

「さぁ、もう居ないの?」
レトナは最後の一人に正拳突きをたたき込んでから衣服についたホコリをはらい、言いました。
「だ、誰もいないよ・・・」
シレイがカウンターの下から言いました。
「つまんないなぁ・・・仕方ないや、次の街で探そうかシレイ」
「う、うん・・・」
レトナとシレイがギルドから出ようとしたその時です。
「ちょっと待った」
誰かが声をかけてきました。
「何かご用?」
振り向いた先には誰も居ません。居たとしても放心状態のマスターくらいです。
「っ!」
次の瞬間にはレトナは『そいつ』の気配に気付き、素早く身をひねって投擲された刃物をかわしました。
「・・・」
レトナはその投げられた方向を見やります。
ギルドの反対側の建物の屋根の上、身軽そうな格好をした男が一人居ました。
「やるね、あんた。気に入ったよ」
男はボサボサの茶色い長髪で、どうやらアサシンと思われる格好をしていました。
「ふふ、私もちょっと楽しめそうかも♪」
レトナは笑顔で言いつつ腰につるされている大剣を引き抜きました。
「レ、レトナ?何する気?」
シレイはオロオロしながらレトナを見つめます。すると真後ろから男の声がしました。
「大丈夫、どっちもそう簡単に死ぬような奴じゃないさ」
「?!」
シレイはビクッと身を震わせて振り向きました。
そこには銀髪で比較的軽装な剣士が立っていました。
「俺の名はマサル。多分これから暫く世話になるよ」
マサルと名乗る剣士はシニカルに笑ってみせました。シレイはただひたすらビクビクしていました。

「ったくもー!チョロチョロよく避けるわね!」
「そりゃアサシンだし」
レトナは大剣を片手で持ち、舞うようにアサシンを斬りつけます。
が、当たりません。
「そろそろこっちも攻撃させて頂くぜ!」
アサシンはどこからか二振りの刃を取り出し、両の手に構えつつ言い放ちました。
「最初っからそうしなさいってば!♪」
レトナは怒っているのか楽しんでいるのか分からないような感じでそれに答えました。
「よっ!」
「んっ!」
キィン!
アサシンの攻撃がレトナの防御を崩すわけがなく、あっさりと止められます。
しかし、もう片方の手で素早い突きを放ちました。
「っ!」
レトナはある程度それを予測はしていましたが、少々のかすり傷を負いました。
「さてー、そろそろ終わらせますかねっ!」
アサシンは疾風の如くレトナに詰め寄り、姿を眩ませました。
「?!」
レトナは一瞬何が起こったのか分かりませんでしたがどこからか声がしました。
「こっこだよーん!」
上でした。
「んなぁっ?!」
レトナは真上に剣を構えました。
が、
「あれ?」
上から襲ってきたはずのアサシンは霧のように消えました。
「引っかかった♪」
「!」
気付いた時には時既に遅く、レトナは上半身を大きくはだけていました。

それから、レトナが魔力を解き放ち、激しい爆炎とともに騒ぎは幕を閉じました。


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