Full Moon. And Demon.
(満月。そして鬼)


この街の象徴的建物を中心に、ゴシック調の家が並んでいる。
真上から見れば それは大きな円となっている。
その形状が珍しい為、 この街は観光名所で有名だ。
この街の象徴である時計塔。結構歴史を感じる時計塔。
そこに私 セオド=イヴ=クイールは住んでいる。
何故こんなところに住むのか。
私は孤立した存在。時計の動く音を聴いていると落ち着く。
一番の理由は日の光が当たらないことだ。
何故か・・・ それは。

深夜。街の明かりは殆ど無い。起きている人間は殆どいない。
私は塔の屋根に座り込んで風景を眺めていた。
此処からだと街 全てを見渡すことが出来る。
満月が出ている。それはもう美しく。
さて・・・
起きているのは私と外から来た人間 そして巡回中の警察ぐらいだろう。
まぁ、此処は犯罪なんて起きもしない平和な街。
巡回するのも無駄のように思え・・・
『? また増えた?』
最近 巡回する警察官が増えた気がする。
あまり気には止めていなかったが、やはり気になる。
私はその場で立ち上がり、街に耳を傾けた。

私は吸血鬼だ。意識すれば通常の何倍の聴力になる。
この街の大体の音を拾うことが出来る。
例えば・・・遠くでタバコを下に落した音なら普通に聞き取れる。
暫く音を聞いていたが、聞こえるのは。

足音 くしゃみ アクビ 溜息 etc・・・

っと雑談をする警官二名の声がした。
その2人の会話に集中して見ることにした。
体を声の方向に向ける。これで更に聞き取りやすくなった。
会話をしているのは50前後くらいと20前後くらいの男性だ。
声で大体はわかる。顔はわからないが。

『ここ静かなところですね。』

『だろう。俺は25年ちょっとやってるが、犯罪なんて起きたことが無いな。』

確かに 私も何年もこの塔から街を眺めてきたが、犯罪が起きたのは・・・2回ぐらい。
っと私は頷いていた。
『けど隣 連続で殺人事件が起きているらしいですね』
っと20前後の男性が言った。
そうか。それで巡回する人数が増えたわけだ。

『なんでも、死体がもう身元が確認することが出来ない状態になっているって』

『あっそうかい』

あっそ はないでしょう・・・
外の世界には私は行ったことがない。
生まれも此処だ。吸血鬼と化したのもこの街だ。
一瞬 過去の記憶が過ぎる。

『くぅっ!』

私は頭を振って思考を振り払う。
思考除去完了。再びあの2人に集中した。
すると さっきまで普通だった雰囲気が一変し、険しい雰囲気となっていた。
2人は走り出した。何かあったらしい。
私は周囲に集中した。巡回中の警官5人が走り出していた。
音だけではこれが限界か・・・

殺気を感じ取った。
そして何かが潰れた音が聞こえた。
私は塔から飛び降り、音のした場所へ向かった。
近づく度に臭いが強くなっていく。
血の臭いだ。それも大量の血。








あ゛あ゛ぁぁぁぁぁっ・・・・・・!!!!

絶叫。そして静寂。向かった警官は全員殺られたのだろう。
私は音のした場所に到着した。
私は目にした。

一面は! 壁も! 辺りに原型留めていない死体!!
地獄絵図だ。

中心に目をやると、1人の男が座り込んでいた。
生き残りであるわけが無い。そうだ。奴が------

男はゆっくり ゆっくりと立ち上がる。
その者は巨体であった。軽く2mは超えている。
全身に血を浴び、血で染まったコートを着ている。
男は私を見た。

『・・・驚いたな・・・おまえは恐怖を感じぬか?
此処の者達は恐怖に脅え、何も出来ず死んで行ったぞ。』

『・・・人間?』

私は男に向かって言った。
外見は人間だ。だが、私のように『人間の形をした化け物』ってこともある。
人間が短時間でこの状況にするとは思えなかったから。
だから私は男にそう言ったんだ。








・・・・はっ!!!言うことは皆一緒かっ!!!!

耳が千切れそうになる声。
男は暫く笑って言った。

『・・・人間・・・それがどうしたと言うのだ・・・?
今 お前に言って何とする?』

御尤もな答えだ。今は私が奴の標的となっているようだ。
殺気が近づいたことによって更に敏感に感じる。
嫌な感触だ。汗が滲む。

『貴方に私は殺せない。いや・・・誰も私を殺せない』

強がっての発言ではない。私は吸血鬼。
普通では死ねないこの体。
全ての機能を完璧に停止させなければ死ねない体だ。

『・・・はっ・・・ははっ・・・面白い・・・』

男は軽く笑う。俯いて笑う。
イライラの感情が湧き上がる。

『・・・殺すわよ?いい加減に------』








ならばっ!!我が貴様殺してやろうっ!!!!

そう言って男は私に向かって走り出した。
人間とは思えない速さだ。
一瞬で私と男に間は無くなった。
男の攻撃を避ける。手に目をやると男は武器を持っていない。
拳で私を殺すつもりか?無理なことを。
男は続けて拳で攻撃をしてくる。
私は避けずに男の攻撃をガードし、素早く男に反撃をしようとした。



ゴッ!!



鈍い音がした。そして私の体は飛ばされてしまった。
体は地面に叩きつけられた。

『ガハァッ!!』

受身さえ出来なかった。完全に体は硬直しきっていた。
脅えているのか?硬直を解き、
すぐに立ち上がろうとするが、右腕に激痛が走る。
右腕が完全に折れていた。
私の体は人間よりも丈夫に出来ている。
なのに折れた・・・信じられない。

『ほぅ・・・生きていたか・・・』

男はゆっくりと歩いてくる。
距離は少し少し縮まっていく。
私には再生能力がある。怪我をしても治すことが出来る。
だが、私の再生は遅い。少しだけ時間稼ぎが必要だ。

『当然よ・・・私 吸血鬼だし』

男は足を止める。
『ほぅ』と一言いい、腕を組んだ。
この間で右腕の骨の組織は復活した。

『吸血鬼が人間と共に行動をしているのか? ふふっ 面白い』

『冗談っ。私はただ、様子を見に来ただけ。別に貴方に危害を加えるつもりは無かった』

男は微笑する。

『けど気が変わった。』

私の腕はほぼ治癒した。これなら動ける。
上半身を起こして男を睨みつける。




これから 貴方を八つ裂きにしてあげるっ!!

私は男との間合いを一気に縮めた。
速さだったら負けてはいない。
攻撃にだけ注意をすれば充分勝機はある。
そして私は鋭く尖った爪で男に斬りかかった。

だが男にその腕を押さえられる。
素早く体勢を立て直してもう片方の爪で斬りかかろうとした。
私は再び逆方向に投げ飛ばされた。

ブチッ

同時に何かが千切れる音がする。
私は血の海に落ちた。

ビチャンッ

私はその場で立つことが出来なかった。
激痛に悶え苦しんでいた。
私の片腕が千切れていた。
焼けるように熱い。
異常な痛みに耐え切れず 私は泣いてしまった。

『痛いか?吸血鬼。お前にも痛みはあるのだな』

男は痛みで悶える私のすぐ傍で私の腕を持って立っていた。
私はその千切れた腕に手を伸ばす。

『・・・哀れな吸血鬼・・・それでも最も惨忍 凶暴と言われた種族か?』

『く・・・そうっ・・・』

『・・・矢張り弱者か・・・つまらん』

男は腕を高く振り上げ、下ろした。
























私の意識が回復したのは夜明け前だった。
叩き千切られた胴体も千切れていた腕も完治していた。
血の海も既に乾ききっていた。残されたのは死体と私だけだ。
満月は薄れていき、少しずつ明るくなっていった。
周囲には男の気配も無く、静かな朝であった。
私はその場に立ち、死体を眺めた。
そして昨夜の出来事を思い出す・・・

『・・・鬼・・・』

(それでも 最も惨忍 凶暴と言われた種族か?)

『・・・私は・・・』













私は 『人間』だった。









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後書

相変わらず文才ないし。意味解らないし。
『万華鏡』特別ストーリーとして作ってみました
レブラントのレの文字すら出てませんね。
おっしゃ。今出た。バンザーイッ!(ぇー)
こんな駄目小説を読んで下さってありがとう御座います(^^)


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