KALEIDOCOPE NOVEL

RIN'S STORY

STORY:2

「BATTLE IN PUBLIC BATH」


 

 


「たっだいま〜♪」

活気のいい声が入口に響いた。
それと同時に明るい気を纏った半獣人―――リンが入ってきた。
そんなリンに知っているものは明るい挨拶を知らない者は微笑をしていた。

「おかえり、リンちゃん」

銭湯―――組織のカウンターに居たロッテが手を振った。
それに気付いたリンはいつも通りのハイダッシュでその場に到着する。
ロッテの横ではリュッケが客の接待をしている。
たまに思うのだがここは組織としてより銭湯としての儲けの方が多いのではないだろうか。

「はい、この子が依頼されてた子だよ」

リンがカウンターに置いたのは2匹の黒い猫だった。
2匹の猫はリンが恋しいのかカウンターから飛びすぐにリンの肩に戻って来てしまう。
妙な和ましさにロッテは「クスクス」と笑う。

「だいぶ懐かれてるのね」

「うん、けどこの子達探すの大変だったんだよ。近辺の猫達に聞いたりしてさ〜」

迷子のペット探し。
それが今回のリンの任務だった。
普段からこう言った仕事は引き受け無いのだが相手がお得意様の依頼だったため断るに断りきれなかったそうだ。
ま、リン曰くいつもの護衛任務などよりこう言った任務の方が好きらしいが。
ロッテはリンの会話を聞きつつ彼女の両肩に乗った猫を指であやしている。
そんな時間が数分続きリンとロッテの周囲は完璧に和んでいた。

「―――で、かなり走ったから服が汗ベタなんだよね〜」

「じゃ、お風呂入ろっか。もう交替の時間だし」

「うん、一緒に入ろ♪それじゃ、この子達預けてすぐに行くね」

そう言うと2匹の猫を抱え疾風のような猛スピードでリンはその場から消えた。

 

 

で、数分後・・・

 

 

風呂に入る用意をしリンは風呂場の前で待っていた。

「で、集まったのがこのメンバー・・・」

ロッテがため息をついた。
右から順にリン、マヤ、ロッテ、イク、アキ。
マヤとイクは射撃場帰りだったので自分が誘った。
「何故アキちゃん!?」と思ったがかわいいのでO.K.としよう。

「けど問題は・・・」

イクが続けた。
その横にはジョニー、リュッケ、あげくの果てにはセシルまでも居る。

「なんでアナタ達が・・・」

「ジョニーに誘われた」

「セシルさんと同じです。ジョニーが俺達を」

「や〜2人がフロに入るって聴いたか―――」

乾いた音が連続で響いた。
いつの間に抜き出したのかマヤの銃がジョニーの額を捉え粉砕した。
白い球体が深紅に染まり一瞬にして肉塊に変わる。
しかしさすがはゴキブリ異常の丈夫さを持つ棒人間、肉塊になった体がゆっくりと再生していく。
こいつを倒すには核爆弾でもいるんじゃ無いだろうか・・・

「取りあえず入ろ、どうせ中では別々なんだし」

「そうだね、じゃね〜皆〜。行こ、アキちゃん」

マヤに先導されリン達は風呂に入って行った。
ジョニー達もしぶしぶ男湯に入って行った。
が、この時アキがリンに引かれて女湯の方へ行った事など当の本人ですら気にしなかった。

 

 


「気持ち〜♪」

湯に体を任せ完璧に極楽気分に入っているリンが言った。
風呂で寛ぐ猫とは前代未聞だが実際に彼女は耳が垂れ下がるほどに寛いでいる。

「やっぱり、仕事上がりのお風呂はサイコーね」

「そうだね〜」

「・・・・・・」

女性陣は全員ゆっくりと湯に浸かっている。
ついでに彼女らの他に客は居らず女湯は貸切状態になっている。

「ね〜アキちゃん。なんでそっち向いてるの?」

不自然に思ったリンがアキを呼んだ。
確かに自分を合わせて4人はゆったりと浸かっているのにアキだけ端で背を向けている。
これはどこからどう見ても可笑しい。

「あわわわわわわ!あ、あんまりこっちに来ないでくださいり、りりりリンさん」

顔を赤面させてアキが慌てる。
「自分は男で本当は男湯に入るべきなのに何故ここに?」と心の中で必死に考える。
生活上、何故か女性と一緒に行動するのが多かったので完璧に自分が男だという自覚が低下してきているのではないかと思った。
何故かタオルも上半身まで巻いてあるし・・・
その前に自分が男であると皆気づいて欲しい、いや分かって欲しい。

「いいじゃないアキちゃん、女の子同士仲良く行こうよ」

と、ロッテ。
違う、絶対に違う。
この人は説明したのに覚えていないと言うか・・・認めてないと言うか・・・

「大丈夫よ、人それぞれなんだしアキちゃんもその内大きくなるよ」

「え〜〜〜〜〜〜!!!」と、言う問題発言を放つイク。
この人もロッテと一緒でさらに自分を虐めるのを楽しんでいる可能性がある。
一時マヤに助け船を求めたが風呂が気持ちいのか完璧に沈められた。
マヤは自分を男として見ているが今は風呂を楽しむのに忙しいようだ。

「ど〜〜〜ん♪」

「わぁ!」

アキが湯に沈んだ。
リンが上から飛びついたのだ。
急に吸う酸素が無くなった為すぐに顔を水面に出す。
言うまでも無くリンは自分の事を男として見ていない。
いや、その前に彼女は異性に対しての抵抗などの感覚が一部欠落しているかもしれない。

「くはぁ!!!いったい何するんですかリンさ―――」

言葉が止まった、同時に思考も停止する。
目の前にはそれがあった。

深い谷間が・・・

タオル一枚に包まれた豊満な膨らみが・・・

これ以上はいろいろと引っかかりそうなので個人の創造にお任せしよう。
アキの思考は男として完全にフリーズしてしまった。

「あれ?アキちゃん?大丈夫?」

リンがフリーズした心配してアキを見る。
「お願いですから前屈みにならないでください」と言おうとした。
だが、フリーズした頭にそういった行動が起こせるはずも無く空しく湯に沈んでいく。

「――――――・・・・・・」

「あれ?アキちゃん!?アキちゃん!!」

アキは完全に沈黙し湯に没した。

ヘブン?
 

 


で、5分後。

 

 

アキを脱衣所に運び出し休ませた一堂は再度湯に浸かっていた。
リンやマヤは電気風呂やジャグジーなどの風呂を回り切り最初の風呂に落ち着いたところだ。

「そろそろ上がろうかな?」

「そうですね、十分浸かりましたし」

十分に風呂を楽しんだイクとロッテが言った。
それを聞いてリンとマヤも風呂から上がろうとする。

「あれ?マヤ〜何か変なの浮きてるよ〜」

「ん、どれ?」

上がろうとした所で突然リンが疑問の声を上げた。
マヤが振向くと確かに先程まで浸かっていた風呂の底から気泡が浮き上がってきている。

「何だろ・・・あれ?」

「お湯が出てるのかな?」

「たぶん違うわよ、この時間にお湯は変えないはずだし」

2人で頭を傾げているとイクとロッテも集まり首を曲げた。
そんな間にも気泡は止まらず、じょじょに気泡の粒が増えていく。
イクとロッテの顔に不安の色が見える。
ついでにマヤはいつも通りの無表情でリンは逆に何が起こるかを楽しみにしている。

―――水しぶきと共に何かが息継ぎをする声が聞こえた。

「ぷわぁ!!!死ぬかと・・・思った!!!」

水しぶきで確認できなが何かが喋っている。
マヤ達には聞こえているのか分からないが少なくともリンの耳には聞こえていた。

「風呂の底に穴があったから潜ってみたのはいいものの・・・あ〜前が見えないぜ」

「だから止めとけと言ったんだよ、セシルさんも言っただろ」

聞き覚えのある声だ。
数は2。
どうやれ巻き上げられた水しぶきのせいで周囲が見れないらしい。
高くまで舞い上がったお湯の霧が落ち着き、視界が戻ってゆく。

「「「「あ!」」」」

「「いぃっ!!!」」

時が止まった。
イク達は目の前に現れたもの達に驚き、現れたもの達はこちらに驚いている。
さすがのマヤも目を点にし動きが止まっていた。

「な、なんでお前らがこ、ここに!?」

「それはこっちのセリフよ!ジョニーはともかくリュッケ君まで!」

「っち、違うんだロッテ。ジョニーが大浴場の墨に変な穴を見つけて、それで・・・」

「「「「問答無用―――!!!」」」」

乾いた音が風呂場に響き渡った。
それは単発の音だったり連射音だったり爆音だったりといろいろだが2人がどうなったかは言うまでも無い。

ヘブン?・オア・ヘル?

 

 

「ふ〜、静かな風呂はいいな〜」 byセシル

 

 

名前:リン・クサナギ(草薙 凛)
性別:女
年齢:12歳
種族:ワイルドロア(異混血種)

万華鏡に所属する半獣人。
元気活発を文字道理具現化したような存在で組織のマスコットでもある。
身体能力が高く、多彩な任務を任せられるのだが本人の希望でペット探しなどの低級の依頼を受け持つ事が多い。
ファンクラブが存在し彼女に危険が及ぶと問答無用で駆けつけると言う恐るべき能力を持つ。


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