題名無し


第1話

「半獣人リン登場〜♪」

 

 

 

 

 


「気持ちいな〜」


大空を見上げ『彼女』がぼやいた
空には太陽が輝き、雲が浮かび、鳥類が飛んでいる
そんな空を彼女は不似合いなビルの上で見上げていた
黒いTシャツとニーソと茶色いジャケットとホットパンツという
子供のような格好で彼女は寝ていた

 

 

「ここに居たんだ『リン』・・・はぁ・・・はぁ・・・」

 

 

屋上の扉が開き、息を切らしながら1人の女性が入ってきた
彼女の名は『イク』、リンの友達だ


「わぁ♪イクどうしたの〜♪」


まるで貰ったプレゼントに飛び付く様にリンがイクに抱きついた
すると、走り疲れているイクはそのまま押し倒された


「『セシル』が・・・探してたよ・・・って・・・」


半開きの目でイクはリンを見た
すると、リンの頭と背中の方から普通は見えないものが見えた
『耳』と『尻尾』である
まるでネコのような耳と尻尾が彼女にはあるのだ


「ん?なに?」

「いや・・・いつ見ても印象が強いな〜って」


イクが微笑した、リンの事は前から知っている
彼女はいわいる『半獣人』と言うので
なんらかの実験で生まれた人工種らしい
彼女は気にしてはいないが周りから見たらかなりの珍人なのだ


「で?セシルはどこに居るの?」

「確かロビーに居たと思うよ」


取り合えず離れたリンからの質問に
立ち上がりながらイクが答えた


「ありがとう♪それじゃぁ行くね」


そう言うとリンは早足でその場から消えて行った
残されたイクは少し間を置き
セシルがリンに押し倒されるさまを予想し微笑した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


「セシル〜♪」

「おわ!!!」


イクの予想通り
セシルは屋上からロビーに下りて来たリンに押し倒されていた
周りでは普段通りの展開に呆れてたり笑っている隊員や
何がなんだかサッパリの銭湯の客がいる


「リン、毎回飛び付くのは止めろって言ってるだろ」


綺麗な緑色の髪と目をした青年、『セシル』がリンに言った
「てへへっ」リンは可愛い笑顔で笑いながら少し反省した


「セシル、じゃ、私は射撃場に行くよ」


後ろに居たセシルと同じ髪と目の色をした少女が言った
「ああ、頑張れよ」とセシルが返す前に
彼女はもうその場には居なかった


「誰?今の」


見たことが無い顔だったためリンがセシルに聞いた


「『マヤ』だよ、歳はお前より3つ上の子だ
 つい最近入ってきたんだよ」

「ってことは〜・・・15歳だね」


自分の歳の12に3を足す計算に数秒掛けて答えを出した
するとリンはここに来た理由を思い出しすぐにセシルに聞いた


「あ、そうだセシル、ボクに用って何?」

「ああ、それなんだが・・・」

 

『セシル!まだかよ!!!』

 

会話に割って入ってくる声がいた
リンとセシルがそちらを見ると得体の知れないものが目に入った
でかい球状の顔、棒の様な顔以外の身体
まるで幼児のラクガキのような姿の『棒人間』がそこに居たのだ


「たく、いったい何時まで待たせるんだよ」


棒人間がグダグダとセシルに言った
「夢じゃないよね・・・」
目の前の出来事に自分の目を疑いながらリンが思った
だが、そんな思いは虚しく頬を抓ったらそこから痛みが走った


「すまないって、『ジョニー』
 けどちゃんと対戦相手は呼んで来たぞ」

「え、どいつ?」

「ほら、コイツだよ」


セシルの目が自分を指している事にリンは気づいた
そして何故、自分が呼ばれたのかがすぐに理解できた


「リン、コイツも最近入って来たジョニーだ
 今呼んだのはコイツの相手をしてほしいんだ」

「おいセシル、コイツ弱そうだぞ」


ジョニーがリンを指(?)差し言った
リンはそんな事は気にせずにそっとセシルに聞いた


「いいけど、セシル、この子ちっちゃいね〜小学生?」

「いや・・・こいつはマヤより1つ上のハズだ」

「え!?ボクより4つも上!」


リンが驚き再度ジョニーを見た
すると、自分の通常の視界の低い位置にジョニーの顔があった


「なんだよ!悪かったな背が低くて!!!」


何を話していたのかを分かったのかジョニーが言った
そして手当たり次第に言葉の槍を飛ばす


「お前だって大して変わんねぇだろ!
 なんだよ!その耳と尻尾は!!!
 そんな事してどうなるんだぁ!!!コスプレか!?
 そこらのマニアが喜ぶぞ!!!ハハハ!!!」

 

 

「う・・・うう・・・わぁ〜〜〜ん!!!!!!」

 

 

リンが大粒の涙を流しながら泣き出した
ジョニーは満足気に笑みを浮かべている
セシルは何とかリンを泣き止まそうとしている
すると、どこからか数人の男がやって来てジョニーを囲んだ


「え!?なんだ!?なんだ!?」

 

「舐めてんじゃねぇぞ!ラクガキ!!!」

「リンちゃんを泣かすんじゃねぇ!!!」

「やっちまえ!!!」

 

「や、止めろ!わ、悪かっ・・・ギャァァァァァ!!!」


やって来た男勢が一斉に拳を鳴らせジョニーに飛び掛った
リンチ状態でジョニーの顔がサンドバックの様に四方に飛ぶ
そして、セシルがリンを泣き止ますころには彼らの姿は無く
ジョニーは顔は原型を留めていなかった


「大丈夫か?ジョニー」


ゴミの塊のようなジョニーにセシルが聞いた
すると塊の一部が開閉し返答したどうやら口のようだ


「セシル・・・あれは・・・」

「ああ、『リンファンクラブ』の連中だ
 リンを泣かしたりするとこういう事になるから気おつけろよ」

「言うのが遅いわ!!!」

「あれ?ジョニーの顔の形が変わってる」


泣き止んだリンがジョニーの顔を見て言った
「お前のせいだろうが!!!」と、ジョニーは言いかけたが
背後に男の群勢の視線を感じ言う事ができなかった


「ま、取り合えず外の行くぞ
 『ついでに、関係者以外は来るなよ!』」


そう言うとセシル達は外に向かった
その一方で男勢が残念そうにその場を立ち去ったのが見えた

 

 

 

 

 

 

 

 

 


殺風景な所だった
あるのはドッチボールができるぐらいの場所
手入れがされていないのか雑草や枯葉が落ちている
そこにはセシルを中心にリンとジョニーが立っていた
リンは準備体操、ジョニーはそれが終わるのを待っている


「ふ〜運動終了〜♪」


最後に深呼吸をしてリンの準備体操が終わった
ジョニーが「やるぞ!」と言う風に前に出ると
リンはジャケットの内側からグローブを取り出し腕にはめた
そのグローブには装飾が施され指先には金属製の爪が付いていた


「あれ?セシル武器ありかよ」

「ま、リンは女しお前は年上だからな
 リン〜ジョニーは頑丈だから本気で戦っていいぞ〜」


「なんですと!?」ジョニーは反論しようとしたが
その時すでに勝手にゴングが鳴っていた様で
リンが走ってくるのがすぐに分かった


「えい!」

「わわわ!!」


リンが指を広げ大きく横に振った
ジョニーはそれをスレスレのところで避る


「くそ、俺をなめるなよ!!!」


ジョニーも自分のエンジンを掛けた
そしてすぐにリンに向かって跳びリンにパンチを飛ばす
だが、リンはそれに反応し軽く身体を反らすだけで回避した
そしてジョニーと顔を合わし「ニィ」っと笑うと
顔面に蹴りをかまし、そのままジョニー蹴り飛ばした


「メッサいてぇぇ!!!」


すぐにジョニーが前を向くと
リンは間近まで接近し攻撃に入ろうとしていた
「っち」そう舌打ちするとジョニーは頭から突進し攻撃を止めた
リンはそれをクロスガードで受けすぐに弾く


「えい!えい!やぁ!!!」


連続でリンがグローブを振った
鋼の爪が左右に動き弧型の光の線を作る
ジョニーはそれを避けようとするが
弾かれてから体勢を立て直していない


「っ―――!!!」


爪がジョニーの頬を掠める
その傷口から血がにじみ出してくる
リンはさらに蹴りを喰らわそうとしたが
ジョニーはすぐに立ち上がりギリギリ蹴りを回避し
リンとの間合いを取った


「すごいね、ボク、久々に強い人に会えたよ」

「俺はお前が嫌いだ!!!」


ジョニーは跳躍しリンのふところに飛び込んだ
そしてすぐに足を払いリンにスキを作らそうとしたが
リンはそのままバク転しまた元の間合いに戻る
だが、ジョニーは再度跳躍し今度は連続でパンチを放った


「ヤァヤヤヤヤヤヤヤ!!!」

「よ、っほ、はっと、わわわぁぁ!?」


リンが石につまずきバランスを崩す
「しめた!」そう思ったジョニーは
リンを腹に狙いを定め全力で腕を振り抜いた

 

 

 POYOOOO〜〜〜N

 

 

軟らかい感触がジョニーの手に伝わった
ジョニーは下げていた顔を上げ自分の手の位置を確認する


「はぁ・・・ははははは・・・」


さらに顔を上げるとリンと顔が合った
リンの顔がだんだん赤くなり今にも泣き出しそうな表情になる

 

 

「キャァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!!!!!」

 

 

数分後、
ジョニーが先ほどより酷い肉塊になったのは言うまでも無い


BACK